こんな夜更けにスコーンかよ
今週のお題「おうち時間2021」
結局朝まで眠れなかったので、とりあえず起き上がってスコーンを焼いている。
ここ1ヶ月くらいの私は、何かにつけてスコーンを焼いている。
スコーンというのは大変都合の良い食べ物である。最低限の材料、最低限の手間、最低限の注意さえ払えばどうにか美味くできるのだ。
上手くないスコーンは確かにあるかもしれない。しかし、美味くないスコーンは存在しないのである。
まだこれだけしか書いていないというのに、もうスコーンが焼き上がってしまった。
スコーンは焼きたてに食べなければいけないと法で規定されているので、仕方なくクロテッドクリームとマーマレードを準備した。
スコーンの最大の長所であり、同時に短所でもあるのは、簡単すぎるということだ。
先にも書いたが、スコーンは基本さえ抑えればなんとかなる。小麦粉とベーキングパウダー、バターに牛乳という至極シンプルな材料を混ぜていくだけだ。
小麦粉が薄力であろうと強力であろうと、牛乳がヨーグルトになろうと、卵を入れようと、砂糖を入れようと、チョコレートや紅茶を放り込もうと、何をしたっていい。
焼くまで15分、焼き上がるまで15分。スコーンが食べたくなってから30分で、本当に30分で焼きたてほやほやのスコーンが食べられるのだ。
初めてスコーンを作ったときはたしか小学生で、家にオーブンがやってきたばかりのことだったと思う。当時はスコーンのありがたみがよくわからず、普通にスナック菓子のスコーンが好きだった。
それから十年以上ぶりにスコーンを作ったのがほんの1ヶ月半前のことである。
強力粉を増やせば本場らしいザクザクスコーンになるし、薄力粉だけで作れば軽めのふわふわスコーンになる。仕上げに卵を塗ればテカテカに照りが出て可愛いし、塗らなくても粉気が残って素朴でいい。
結局どう作っても美味いことには変わりなく、その美味さはすなわち小麦とバターに帰結する。
独特の食感も、鼻を抜ける香りも、焼くごとにぱっくりと層をなす生地も、バターを相当量使っていることからすれば当然なのだ。
と、考えると、今朝作ったスコーンは異形である。
そもそもバターを使っていないのだ。
先週マリトッツオが食べたくて、でも街には出たくなくて自分でマリトッツォ(ブリオッシュにクリームチーズ入りのホイップとマーマレードを挟んだだけ、これも美味かった)を作ったときに余った生クリームを代わりにした。
生クリームをバターと牛乳の代わりにして、薄力粉が切れていたからホットケーキミックスを強力粉に混ぜて使った。ホットケーキミックスは甘いからということで砂糖も入れず、あとはベーキングパウダーをいつもの半分入れておいただけである。
いつものようにバターを使うとき、冷たいバターを粉類と混ぜてそぼろ状にするサブラージュという工程がある。この工程はスコーン作りにある唯一の山場で、無心になれるお気に入りでもある。
ところが、生クリームはこの工程がない。というか、生クリームでスコーンを作る手順は
・粉類に生クリームを入れる
・混ぜる
・成型する
・焼く
だけだったのだ。
今朝はホットケーキミックスというチートを使ったせいで計量もほぼ無かった。
焼くまで5分、記録大幅更新である。
結論から言うと、美味かった。バターで作るものよりふわふわしっとりしているし、優しい味がした。ふくらみも申し分なく、正直最高の出来である。
バターで作るスコーンが焼き上がりまで30分だとすれば、生クリームで作るスコーンは食べ終わるまで30分だった。味も食感も軽やかで、徹夜明けの朝にしっくりくる美味さだった。
スコーンがどう作っても美味い理由が、バターのおかげでなかったというのは救いかもしれないと思う。
生クリームも結構値が張るし、脂肪分も高いのはわかっている。調べてみるとオリーブオイルで作っても美味いらしいが、どちらにせよいい材料を使わねばならない気取った食べ物であるのに違いはない。
それにしたって、計量の手間や手順を省き、材料を大きく変えてさえもなんとかなってしまうお気楽さ。人生もそうありたいと思うのだ。